人気ブログランキング | 話題のタグを見る

2016年8月7日

「人間関係 どうしたらいいのか」 詩編128:1-6、コロサイ3:18-4:1
                            香月 茂 牧師

 私たちの時代は、人間関係が大変、難しい時代だと思います。だんだんと難しい時代になってきたかもしれません。人間関係について、今日は、少し皆様とともに、今朝の聖書箇所を踏まえながら、考えたいと思います。
 さて、人が生まれて、最初の人間関係は、親子関係であります。この最初の関係は、とても大事な人間関係であり、子どもが3歳になるまでの母子関係は、基本的な信頼関係を形成する大切な時だと言われています。
 こうした家庭の人間関係を特に問題にして語っているのは、カトリックの現教皇、フランシス教皇であります。彼は昨年、年52回の講話の中で、家庭、家族のことについて、33回も語っています。実に6割以上です。また家庭の環境のことで言えば、留岡幸助氏の活動を思い起こします。彼は「非行少年の父」と呼ばれて、少年院に送られた少年たちの矯正のために生涯を捧げた人です。そのきっかけは、少年院に送られた少年たちのほとんどが、不幸な家庭環境で育てられていることが解ったからでした。現代の家庭内暴力や育児放棄の家庭でした。そこで少年たちの矯正のために、家庭が必要だと確信し、家庭学校を始めたのです。
 今朝の箇所の21節には「父親たち、子どもをいらだたせてはならない」とあります。この言葉には、深い意味が含まれています。これは父親だけではなく、母親も入ります。人間が人間関係を築く基礎的な場所は、家庭であることが解ってきます。伝道者パウロは、コロサイの教会の人たちに、家庭での人間関係、夫婦関係、親子関係、そして主人と奴隷の人間関係で大切なことを短い言葉で語っています。
 パウロは、ユダヤ人であり、ユダヤ的な家庭教育を受けて育っていますが、ユダヤ式の家庭教育論をここで語っているのではありません。教会の人たちは、ユダヤ人ではなく、アジア人です。ユダヤ人から言えば、異邦人でした。ここにはユダヤとは決定的に違う教育論があります。それは、主人と奴隷の関係です。ユダヤでは、奴隷がいませんでした。それに対して、コロサイには奴隷が普通にいました。否、奴隷が多くいたといった方がいいでしょう。では、どうしてユダヤには奴隷がいなかったか、それは神の厳然とした言葉がありました。(出エジプト記20:2、申命記6:12参照)それに対してギリシャ、ローマ世界では、奴隷はいるのが当然でしたし、勿論、奴隷の人間不平等論は当たり前のことでした。コロサイの教会の人々たちの中にも、奴隷を家で使っていた人たちがいたでしょうし、教会員の中には奴隷の身分の人たちも多くいたのです。
 パウロは、会ったことのないコロサイの人たちに教えています。「人にへつらおうとしてうわべだけで仕えず、主を畏れつつ、真心を込めて従いなさい。何をするにも人に対してではなく、主に対してするように、心から行いなさい。」と。私は、古代ローマの人たちが、どのような考えをもって行動をしていたかを調べました。そこで当時の奴隷たちの中には、へつらおうとしてうわべだけで主人に仕えていた人たちが、多くいたことを知りました。主人に気に入れられて、奴隷から解放されて自由人になるためです。こうした人たちは、奴隷ではなくても現代にもいます。自分の利益だけを考えて、他者のことを考えません。自己中心的な考えを持ち、行動する人たちです。パウロはいくつかの町を伝道して手紙を書いていますが、コリントの教会の人たちに書いた手紙の中に、こんなことを書いています。「私は、ユダヤ人にはユダヤ人のように、神を知らない人には、神を知らない人のようになって人に仕えた」と。
 「人にへつらおうとしてうわべだけで仕え」とあります。その逆は「心から仕える」ということです。「心から仕える」ということは、心から相手を愛さなければなりません。愛がなくて、心から仕えることはできません。それは無理です。心から仕えるには、愛がなければできません。こうしたことを考えますと、「何をするにも人に対してではなく、主に対してするように、心から行いなさい。」というのは、別の言い方をすれば、「主に心から仕えること、それと同時に、隣人に仕える」と言えます。この「仕える」を「愛する」という言葉で、私は言い換えることができると思います。となると、こうなります。「主を心から愛すること、それと同時に、隣人を愛すること」。これはイエス様が言われた最も大事なこと、神の律法が教えていることは、これに尽きるというものです。これは、大変難しいことでもあります。なぜなら、愛し続けることができずに、どこかで自分の勝手な言い分を主張しがちであり、愛せないからです。
 伝道者パウロは、ローマが支配する地においても、神々を拝む地域でも、はっきりと、言っているのです。「主に心から仕え、それと同時に、隣人に仕えなさい。」と。夫婦関係でも、親子関係でも、親戚関係でも良い実りを結ぶことでしょう。人間関係、どうしたらいいのか、それは、相手に仕えることであり、相手を愛することです。
by higacoch | 2016-08-13 16:13 | コロサイ
<< 2016年8月21日 2016年7月31日 >>