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2016年6月12日

「透明の翼を持つ人」 詩編91編1~16  マルコによる福音書1章12~13
                                          濵崎 孝 牧師

 月刊誌「信徒の友」に、「教会生活のために」というページがあり、「教会の掃除はだれがしているのですか」という質問に、日本聖書神学校教授をつとめた大沢秀夫牧師が答えていました。「本当にいったい誰が、いつもきれいに教会の掃除をしていてくれるのでしょう?教会の印刷物を送ってくれるのは?そして礼拝堂のお花を活けてくれるのは誰でしょうか?……私の今いる教会では、女性の天使たちが四組、おじさんたちの天使が二組、そして青年の天使一組が交代で礼拝堂の掃除をしてくれています。……聖書では天使は、神の消息(メッセージ)を伝えるものとしてしばしば登場します。でも自分を目立たせるのではなくて、……メッセージを告げるとすぐに消えてしまいます。天使の存在は、私たちが見えないところで支えられて生かされて在ることを教えてくれます」。――大沢先生は、見えない所で神さまのご用をつとめてくれる人たちを「天使」と呼んだらどうだろう……と語りかけていました。マルコによる福音書の始めに登場する洗礼者ヨハネという人は、「使者」(アンゲロス)と言い表されています(英語の「天使」エンゼルは、ギリシア語アンゲロスに由来)。ですから、大沢先生の提案に賛成して振り返ってみると、私どもは多くの天使に仕えられ、支えられて来たことがわかります。
 福音書の著者マルコは、ナザレのイエス=救い主イエスさまには「天使たちが仕えていた」と証言しましたが、その「天使たち」は主なる神さまに奉仕する霊的な存在、天的な存在で、人間ではありません。そして、こういう「天使たち」が仕えていたので、野獣が歩き回っている荒れ野に40日間留まるような生活も平安だったし、サタン=悪魔のような恐ろしい存在が誘惑してもイエスさまは何のダメージも受けなかった……というのです。
 皆さん、マルコ先生にも、「荒れ野」に留まるような体験があったのかもしれませんね。また、「サタンから誘惑を受け……た」というような苦悩の体験も。さらに、「野獣」(複数形!)の傍にいるような恐怖の体験さえ。そして、そうであればこそ、マルコ先生はあのキリスト・イエスさまにあった霊的現実から、力強い励ましや福音を聴いたのではないでしょうか。サタンの恐ろしい企てに勝利された主イエスさまが、私どもと共にいてくださる。それは、私どもにとってどんなに大きな力であり安心であることか……と。
 旧約聖書のイザヤ書の預言は、次のように語っています。主なる神は、「彼ら(主の民)の苦難を常に御自分の苦難とし/御前に仕える御使いによって彼らを救い/愛と憐れみをもって彼らを贖い/昔から常に/彼らを負い、彼らを担ってくださった」(63章9節)。――主なる神の民には、常に主ヤーウェのご慈愛が注がれて来たのであり、あの荒れ野のイエスさまにあったような天使による力強い支援も豊かに祝福されて来たのです。
 『まばたきの天使』(日本基督教団出版局)という本があります。副題は、「わたしの水野源三」です。著者は、隣人を「わたしに出会ってきた天使」と言い表した……。水野源三さんは、小学生の時に罹った赤痢が原因で手足の自由を失い、喋ることも出来なくなりました。けれども、水野さんの家庭にキリストの福音が届き、源三さんは聖書を一心に読む人になり、やがてキリスト・イエスさまとの出会いを経験しました。主の民の一人になったのです。その信仰の喜びを水野源三さんは、歌や詩に表し、『わが恵み汝に足れり』(アシュラム社)などの詩歌集が生まれたのでした。水野さんは、イエスさまから詩(うた)の翼を贈られたのです。その水野さんをまばたきの天使と言い表したのは、源三さんのお母さんが「あいうえお」の表を使い、一字一字を指し示すと、源三さんが使いたい字を瞬きで合図したからです。水野源三兄(きょうだい)も、イエスさまから与えられた翼で多くの人を勇気づける詩歌を書き、その透明の翼で天国まで羽ばたいて行きました。そして、「天使に等しい者」(ルカによる福音書20章36節)になったのです。
 キリスト教会の礼拝堂に集まっているお互いは、みな弱さや欠点、的外れや不自由を抱えた人間です。けれども、私どもが礼拝している神さまは、詩編91編が語りかけているように、「羽」や「翼」をお持ちなのです。ですから、礼拝堂に集まっている私どもは、いつかきっと、隣の人の背には透明の翼があるのだ……と想わされて来るに違いないのです。
 皆さん、キリスト・イエスさまは、私どもを透明の翼を持つ人にしてくださろうとしています。慈しみ深いイエスさまは、試練や苦難で苦しむ人々のことを憐れみ、私どもを遣わして助けようとしていらっしゃるのです。どうかその嬉しい御心がなりますように……とお祈りしていきましょう。 
by higacoch | 2016-06-18 18:20 | マルコ
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