人気ブログランキング | 話題のタグを見る

2010年12月5日

「しるしが与えられる」  イザヤ7:3-14、マタイ福音書1:21-23

 アドベントになると礼拝堂にはクランツ、また壁やドアにはクリスマス・リースが飾られますが、最近ではクリスチャンでない家でも、玄関ドアにリースを飾ることが多くなってきました。そして商店街にはイルミネーションが飾られ、クリスマス・ソングが流れてきます。このような光景をみますとクリスマスが多くの方々に知られ、日本の社会に浸透してきているようにも感じられます。しかしクリスマスはイエス・キリストの誕生日だと知っていたとしても、それがどのように預言され、そして実現されていったのかを知っている人はまだ少ないと思います。
 イエス・キリストの誕生の預言をはっきりと示しているのは預言者イザヤです。イザヤ書には、今朝の箇所以外にもいくつかイエス・キリストのことが預言されています。こうしたことから、新約聖書の中にある「預言が成就した」という引用は、イザヤ書からもっとも多くなされているのです。14節に「わたしの主が御自ら、あなたたちにしるしを与えられる。」とあります。しるしは旧約聖書に多く記されています。79回も記されていますが、ノアの物語での神様の契約のしるしである虹、またモーセがエジプト王ファラオの前で示した災いのしるしなどがよく知られています。  
 イザヤの預言が語られた当時は、アハズ王の治世の時代で、歴史的にはまさに乱世でした。巨大な軍事国家が周辺国家を脅かし侵略しており、諸国の王もその恐怖にさらされていました。国内でも権力闘争が行われ、王の暗殺が起こり、体制も不安定でした。そのような時代に、アハズ王は軍事力に頼り、大国アッシリアに助けを求めていきました。イザヤはアハズ王に軍事力に頼るのではなく、神を信頼するようにと進言しましたが、聞きいれませんでした。このような軍事的な力が世を支配しているような時代にイザヤは「救い主が生まれる」しるしを預言しました。「見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み、その名はインマヌエルと呼ぶ」と。ここにあるのは、勇壮な軍事的な指導者、ダビデ王のような偉大なる王が出現するというしるしではありませんでした。そうではなく、おとめが身ごもって男の子、赤ちゃんが生まれるというものだったのです。
 ここに神様の深い御心が示されています。それは、戦争時にもっとも弱いのは赤ちゃんです。人の中でも力弱く、戦時下では一番に犠牲を強いられます。人間の罪によって引き起こされる戦争で幼な子が殺されていく、そのような弱い存在である赤ちゃんがしるしとして、与えられているのです。(昨日、私のもとにユニセフ(国際連合児童基金)からの郵便が来ました。ユニセフの事務局長のメッセージが載っていて、「世界では、頻発する自然災害、紛争、貧困などの影響が、もっとも弱い立場の子どもに重くのしかかり、今この瞬間にも何百万人ものこどもたちが病気や空腹に苦しんでいる。私たちは飢えや病気、紛争や災害に苦しむ子どもたちの命の権利を守るために活動をしています。今も約4秒に一人、幼い子どもが5歳の誕生日を迎える前に亡くなっています」とありました。)
 人の世界ではいつの世も、戦争、紛争、争い、喧嘩、家庭内にもめごと、そうしたことが起こります。そのような時、もっとも弱い立場にある幼な子、赤ちゃんが虐げられる、今の社会も児童虐待があるようにです。イザヤの戦争が絶えなかった時代に、もっとも弱い存在である赤ちゃんがしるしだということを考えていく時、命の大切さを教えられます。弱い存在の命に心が向くようにと神様が私たちに示していると思えます。
 しるしとして示された「男の子の赤ちゃん」のことが、少し後の9章にも記されていますが、そこには「 闇の中を歩む民は、大いなる光を見、死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。 ・・・ 地を踏み鳴らした兵士の靴、血にまみれた軍服はことごとく火に投げ込まれ、焼き尽くされた。 ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。その名は、驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君と唱えられる。」とあります。戦争が絶えなかった時代、そのような悲惨な状況の中で戦いの王がしるしとして与えられたのではなく、平和の王となる赤ちゃんがしるしとして与えられるとイザヤは預言しています。そしてその子の名はインマヌエル、「神は我々と共におられる」という意味なのです
 旧約聖書にも神はある特定の人物と共におられたことが記されています。アブラハム、イサク、ヤコブ、モーセなどと共におられました。危機的な状況の中で主が共におられたことが記されています。しかしイザヤが預言した、「インマヌエル」は神がある特定な人と共にいて下さるという約束ではなく、私たちと共にいて下さるという約束です。つまり、神ご自身が赤ちゃんとして肉体を取って生まれることでした。そしてイザヤの預言後700年ほど経って、しるしであるイエス様がお生まれになられたのです。こうしてイザヤの預言は成就しました。
 私たちのために、私たちと共に生きられたイエス様、平和の王として、命を大切にされたイエス様、私たちの救い主であるイエス様の誕生を喜び、クリスマスを待ち望みながら、過ごしましょう。
by higacoch | 2010-12-11 17:13 | イザヤ書
<< 2010年12月12日 2010年11月26日 >>