「子ろばは、あなた」 ゼカリヤ書 9:9-10、マルコ福音書 11:1-1
今朝の箇所に一匹の子ろばが記されています。イエス様の時代、ろばは荷物を運ぶ便利な動物で、現代で言えば車のようなものでした。身近かな所でろばが飼育されていましたし、そうした家などは一階が家畜小屋になっていて、二階に家族が住んでいたとも言われています。このようにろばは人々の生活の場によくいた家畜でした。しかし、ろばは汚れた動物に区分けされていて、宗教的な儀式には使われず、神殿での献げ物にすることはできませんでした。ユダヤの宗教的な規定にどんな家畜でも母親から生まれた最初の子は神様に献げなければならないという規定がありましたが、ろばは汚れた動物でしたから、ろばの初子を献げられません。規定ではその代わりに小羊を献げるよう定められていました。小羊を献げられないのなら、その初子の首を折って殺さなければならないと定められていたのです。 新約聖書にろばのことは少ししかでてこないのです。ここ以外では良きサマリヤ人の譬えの中に出てきますが、他には2箇所しかありません。汚れた動物と考えられていたからかもしれません。そのような中で、イエス様は積極的にろばを用いておられます。しかも子ろばを。子ろばはろばの中でも小さい、価値がないと考えられていたのです。 当時、ろばと比べられた動物に馬がいます。馬も物を運ぶとか、狩猟に用いられたのですが、農作業のために用いられることはほとんどありませんでした。むしろ戦車隊や騎兵隊など、戦いのために用いられました。旧約聖書ではエジプトの戦車部隊がモーセを追跡するのが記されており、イザヤ書や箴言、詩編には軍馬を頼りにすることを戒めています。 何故イエス様が子ろばに載って都エルサレムの入場されたのか、弟子たちや周りの人たちはよく解っていませんでした。それぞれがイエス様に対して、何らかの期待を抱いていたでしょう。ある者はユダヤ王国の再興をもたらすダビデのような王様にと、またある者は都でも偉大な奇跡を現して下さるのではないかと。 しかし、都での受難をイエス様は覚悟しておられました。これまでに都エルサレムに入城した王様がいました。ダビデ王です。戦いに勝利して、軍馬にまたがり兵を連ねて入城してきました。それに対して、イエス様は兵隊ではなく、弟子たちや一般民衆を連ね、しかも子ろばに乗ってやって来られました。このことはゼカリヤ書に預言されていました。「見よ、あなたの王が来る。彼は神に従い、勝利を与えられた者、高ぶることなく、ろばに乗って来る。雌ろばの子であるろばに乗って。わたしはエフライムから戦車をエルサレムから軍馬を絶つ。戦いの弓は絶たれ、諸国の民は平和が告げられる。彼の支配は海から海へ、大河から地の果てにまで及ぶ」と。ここには軍馬が絶たれ戦いの弓は絶たれて平和が告げられるとあります。そのような王としてろばに乗ってやってくるのは、戦いの王ではなく、平和の王です。イエス様は子ろばに乗って都に入城されたのは平和の王として来られたということです。 イエス様は子ろばを用いられました。子ろばはイエス様を乗せることで大きな働きをしました。しかし、子ろばが自分の方からさせて下さいと申し出たのではありません。あくまで、イエス様が、子ろばを用いられました。汚れた動物だと考えられていましたが、イエス様はその子ろばを選ばれて、神の栄光を現す動物とされているのです。その子ろばが特別な力を持っていたからではありません。まだ人を乗せたこともなかったのですから、むしろ、弱々しい子ろばでした。 こうしたことはイエス様の弟子たちにも言えます。弟子たちがイエス様の所にやってきて弟子となったのではありません。イエス様が選び、「わたしに従ってきなさい」と招き、弟子となっていきました。イエス様も言われています。「あなたがたが、わたしを選んだのではなく、私があなたがたを選んだ」と。「あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、わたしがあなたがたを任命した」と。 選びにおいては皆さんにも言えることなのです。私たちがイエス様を信じるというのは、自分の知識や能力で信じることができたのではありません。そうではなく、イエス様があなたを選んで下さり、信じることができるようにして下さっているのです。それは、丁度、子ろばが選ばれたのと同じです。ですから、ろばはあなたなのです。イエス様が子ろばを用いられたように、あなたがたを用いられます。「あなたがたが、実を結び、その実が残るように」。 今日、洗礼を受けられる奥井さんも、イエス様が用いて神様の栄光を現してくださることを確信しています。
by higacoch
| 2010-09-11 17:45
| マルコ
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