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2016年12月4日

「どんな時にも御言葉を伝えなさい」エレミヤ36:1-3 テモテ二4:1-8
                          香月 茂 牧師

 皆様と共に礼拝を守ってきて10年、時が経つのは早いもので、今日が実質、ここの牧師として語る最後の説教と考えてもいいでしょう。この時に、私が最後に皆さんにお伝えしたいことは「御言葉を宣べ伝えなさい。」ということです。
 パウロは、テモテに言います。「御言葉を宣べ伝えなさい。折が良くても悪くても励みなさい」と。パウロの自分の知識や、これまでに得た人生処世訓ではありません。自分の知恵の言葉でも、偉大な預言者の言葉でもありません。主イエス様に集中して、主イエス様の言葉や祈りの言葉です。今、私も、私の後を継いでくださる関先生にお伝えしたいのです。そして、関先生から皆さんに伝えて欲しいのです。「時が良くても、悪くても御言葉を宣べ伝えなさい。」と。主の御言葉であって、私たちの言葉でも、教会の言葉でもありません。
 では、良い時、悪い時とは、何時でしょうか。伝道するのに、時の良し悪しがあるのでしょうか。皆さんは、伝道するのに、どんな時代が良いのか、悪いのかと問われたなら、どう答えるでしょうか。多くの人は、迫害などがない時が良い時代で、迫害が激しい時代は悪い時代と考えると思います。私もそう思っていました。しかし、教会の歴史を見ていくとそうとは言えません。否、むしろ反対のように思えます。迫害がなくなった時代、教会はどんどん多くなり、権力を持ち始めました。国々の王よりも力が強くなり、彼らを支配するようになりました。そうなった時、教会は御言葉を伝えるよりも御言葉を解釈するようになりました。御言葉に仕えるよりも御言葉を支配するようになり、教会が御言葉よりも上に立ち、人々にお説教するようになりました。そうなって、教会は御言葉を伝えなくなり、教会にとって都合のいい言葉を伝えました。もともと、わたしたちが良い時、悪い時と考えるのは、私たちの価値基準によってであり、それが神様の判断基準に沿っているのか、解りません。むしろ、人間の価値基準で決めつけてしまっているのです。こうしたことを鑑みると、そう簡単ではありません。何時がいい時か、悪い時か、解らなくなります。何時が伝道に適している時なのか解りません。だったら、むしろ伝道を控えた方がいいのでしょうか。そうではありません。パウロは、私たちにとっての良い時、悪い時が解ることが大切だとは言っていません。大切なのは「御言葉を宣べ伝えなさい」です。何時がいい時か、悪い時か、解らなくてもいいのです。どんな時にも「御言葉を伝えなさい」と教えているのです。パウロは「伝える」ということを命じています。なぜなら、教会においても人間的な面が、どうしても生じてくるからです。
 では、「伝えなさい」を強調して「伝えれば、いいのです。」となったら、またそれも問題です。隣人が、聞こうと聞くまいと語りっぱなし、相手を無視して、一方的に伝えればいいというものではありません。そこには、祈りの心がなければなりません。隣人に対する愛がなければなりません。新宿駅や渋谷駅などで、拡声器を背負って大音響で「悔い改めなさい。悔い改めなければ地獄に落ちる」と語り、人々を脅しているのは御言葉を伝えているとはいえません。伝えるのではなく、脅しています。伝えるのというのは、愛が必要なのです。パウロが人に福音を伝えるために、「その人に仕える者になった」という奉仕の心を持たなければなりません。このように愛と奉仕の心をもって伝えていかなければなりません。
 パウロは、愛する弟子、テモテに「御言葉を宣べ伝えなさい。」と命じていますが、パウロの趣旨からいうと、テモテだけに命じたのではありません。テモテは若き伝道者でしたが、伝道者だけに命じておられるのではなく、教会の誰にでも命じているものと受け止めます。
 さらにもう一つ、時の良し悪しを私たちの時代とか、外の環境で考えましたが、これは私たちの内側においても考えなければなりません。つまり、わたしたちがどんな状況なのか、どんな状態なのかということです。パウロは、フィリピの教会にあてた手紙を牢屋の中から書きました。その手紙の中には、「今は福音を宣べ伝えることができないので、残念だ」と書いてはいません。否、むしろ福音が宣べ伝えられていると喜んで手紙を書きました。またパウロは、多くの苦難・災難に会いました。そうした時は、伝道できないと嘆いたのではありません。そうではなく、個人的には伝道が難しい状況と言えるときにも伝道に励んでいます。
 今朝の箇所で、パウロは、「わたしは、世を去る時が近づきました。」と言っています。この言葉から、ここはパウロの遺言説教とも言われています。私の場合は、もうすぐ教会を離れて、新たな伝道の地に出掛けます。ここを離れます。ですから、大事なことを伝えたかったのです。御言葉を伝えることは何よりも大事なのですから。私は、皆さんに、繰り返して言いますが、「社会が、自分自身が、どんな時でも、御言葉を宣べ伝えなさい。」と。このことを私自身も求め、皆さんにも求めていって欲しいと願います。
by higacoch | 2016-12-10 19:24 | テモテ
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