「つながっていればこそ」 出エジプト19:1~6、ヨハネ福音書 15:1~11
荒瀬 牧彦 牧師(めぐみ教会) めぐみ教会の会堂前は、歩道拡幅工事が行われた関係で、手作りの木塀や掲示板を撤去したり、おとなりとの間にフェンスを立てたりして、かなり様子が変わった。この模様替えのために、15年ほど前に故渡邊光男兄が植えたぶどうの木を伐採することになった。ここのところ収穫がめっきり減ってしまっていたので、そろそろ替え時ではあったが、でもお世話になった木を切るのは辛いことだった。小池恒彦兄の提案で、切ったぶどうの幹の部分は、教会前にオブジェとして飾った。枝は何人もの教会員が持ち帰り挿し木を試みている。そして、新たに苗木2本を購入し、第二世代のぶどうの木が枝をはり、実をつけるのを待つこととした。「教会にはぶどう棚だ!」と最初の苗木を植えてくれた先人の、祈りは大切に継承していこうと思う。 さて、ぶどうの枝がぶどうの木につながって豊かに実を結ぶという主イエスの比喩。とてもわかりやすいイメージだ。でも実は、ぶどうという植物と、神‐人間関係の間には大きな違いがある。ぶどうの枝には、幹につながらないという選択肢などは存在しない。しかし人間にはつながるか否かを選ぶことができる。選べてしまうから厄介だ。しかし思うのだ。イエス様が「わたしにつながりなさい」と呼んでくださり、そうしたいと願って自分の意志でつながるなら、自動的につながっているのよりずっと素晴らしいではないか。強制でも一方通行でもない、自由からこそ生まれるつながりこそがぶどうの房を生むのだ。 「父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛してきた。わたしの愛にとどまりなさい。」主イエスにつながっているというのは、イエスの愛のうちにとどまるということである。愛という言葉は美しいが、実際に愛するのは大変なことだ。神様が人間を愛してくださる愛を思うと、それがどれほどの忍耐、どれほどの赦しを必要とするものかにため息が出るほどだ。ましてやわたしたちにとって、イエス様の愛にとどまる、というのは容易なことではない。イエスの愛にとどまって生きるのは、忍耐と覚悟と高い志を求められることである。そして何より、イエスの言葉を聞いてそれを心に納める、それに従う、という謙虚さがなければできないことだ。 ところが、愛にとどまろうとする決意をくじこうとするものが世には溢れている。実際問題、この福音書が書かれた時代も、そして今も、イエスの愛から離れていってしまう人は多いのである。 今の日本の情勢に危機を感じておられる方は多いだろう。世の流れが一定方向に強く流れ始めると、多くの人々は雪崩をうつようにその流れに乗っていくようになる。今まで唱えていたことが何であれ、それと関係なく、保身に走るようになる。保身に走っても、慌てて乗り込んだ船がその先沈没に向かえば元も子もないのだが、そこまでは見えないのだ。不合理な話だが、「滅びに向かって保身に走る」ということが起きてくるだろう。そういう時にこそ、「イエスの愛にとどまる」という信仰が問われる。イエスを見限っていったあのユダのように自分の打算で動くのか、それとも、イエスの「つながっていなさい」という招きにかけるのか。 「今もしわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るならば、あなたたちはすべての民の間にあってわたしの宝となる」と神はイスラエルに言われた(出エジプト19章)。 「あなたは宝だ」。そう言ってくださる御方としっかりとつながっていればこそ、そのつながりにおいて、わたしたちは「宝」なのである。小さくても、みすぼらしくても、弱くても、それでもなお「宝」と呼び、大切なものとして用いてくださる御方がいる。神の言葉に従って生きるというつながりがあればこそ、いのちを輝かせて生きることができる。ぶどうの枝は、ぶどうの木につながって、そこから豊かな樹液をいただいてこそ、豊かな房を実らせるのだ。キリストにつながっていよう。
by higacoch
| 2015-05-24 18:33
| ヨハネ福音書
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